/ SS-Menu / TOP / HOME /


 このお話は、「白き龍の神子」の後日話のようなものです。
 男の一人語り。



「その後、男は世界を見る」 ――written by 7shino.



 人々が空を見上げている。
 男もそれを見ていた。

 かつて、自分が望んだ力の源。それを得るために利用しようとした、一人の少女が、今、龍となり空へ上がった。
 男はただ、それを見ていた。

 人々が、歓声を上げる。

 男は呼ぶ。
「……龍の……神子……」
 応えてくれる者は、最早いなかった。
――何故。
 呟いたそのとき、歯がゆい思いのあまり、唇を噛んだ。


 おかしな話だ。
 わたしは、今まであの少女に何を言っていたのだろうか。

 わたしの道具になれ、と。

 そして。
――そして。


「……」
 しゅるり。
 止めていた紐を解き、久方ぶりに仮面を取る。
 遮るもののないままに、この眼で、神子の消えた先を見つめた。


 空は晴天。
 なのに、雲の切れ間から毀れた唯一の光のように、あの場所が神々しく照らされて見えるのは何故だろう。

 男の頬に当たる雫。
 ぽたりと落ちたそれを、男は『天が荒れている』せいだと、信じて疑わなかった。



 やがて、時が流れる。


 かつての少女が先代の龍神の神子と呼ばれる存在に為り経ても、男は生きていた。
 決戦の末に、人外のものと化したためだろう。
 生も死も無い不可思議な存在のまま、この世にとどまっていた。

 だからこそ、世の移ろいを感じるたびに、彼の少女がいた頃を思い出す。百年も前のそのことを。


――お前が。
 他ならぬお前が守った世界は、最早変わり果ててしまった。
 自らが滅びを望んでいる。

――何が、今浄土≠セろうか。


 空に昇ったお前は、今、何を思う。
 こんな世界に、何を思う。


 男は、笑う。
「壊してやろうか、神子よ?」
 男の声に応えるかのように、ざわざわと、男の立つそばで、風が騒ぐ。

 かつて欲したときとは違う。
 このような世界、何ら魅力も感じはしない。

「――だから、このわたしが。……お前を知るこのわたしこそが、壊してやろうぞ。神子よ−−」

 お前が護った世界など、もう在りはしないのだ。


――お前が護った世界など……。



――『その後、男は世界を見る』Fin.――
 written by 7Shino.



Thank you for reading all to the last!

サイトup:07.09.29.


 「遙か2」の悪役として復活したアクラムなわけですが、わたしの考えた話ではこんな感じに解釈されちゃいます。
――まあ、アレですよ。ひどいと思いませんか。
 いきなりアクラムが「遙か2」の神子(花梨ちゃんごめんね;)とくっついたりしちゃうとさあ。

 あかね至上主義でスイマセン。ひどいことさせてるけど(ぁ




The fanarts are drawn by 7Shino. * The fanfiction are written by 7Shino.

This site is owned by 7Shino.Opened on 9/10/2007.
Please do not copy and reproduce from my fanarts/fanfictions without permission.



/ SS-Menu / TOP / HOME /